車好きの方ならDIYで、アクセサリーの電源取り出しなどで、車両ハーネスを加工することもあるかと思います。しかし銅線とアルミ線では、素材の違いから取り扱いを間違うとおもわぬトラブルを引き起こす可能性もありますので、特性を理解した上で取り扱う必要があります。そこで、アルミ線とは、どのようなものかを説明し注意点を解説していきます。
移り変わりの背景
近年、自動車排出ガス規制が厳しくなる中、燃焼効率の向上と共に、車両の軽量化が求められるようになっています。そのため、銅線を使用したワイヤーハーネスが、アルミ線を使用したものが使われるようになってきています。
アルミ線
自動車向けでは、アルミ線の使用は、バッテリーのケーブルなどにの大電流をの流れる太い配線部分での使用が主流でした。これは、アルミは導電率が銅と比較すると低く、電気抵抗を同じにするには配線の径を太くする必要があるからです。
また、銅と比較してコストが安く軽量なのがアルミのメリットですが、配線を太くすると軽量化効果が薄れてしまうという問題がありました。
アルミ線のメリット
- 銅線と比較して1/3の比重
- 材料コストが銅の半分
- 資源量(埋蔵量)が多く、安定供給が可能
アルミ線のデメリット
- 異種金属材料による電解腐食の発生。
- 表面酸化皮膜の生成速度が速く、半田付けが困難。
- 圧着接続後に圧着部劣化現象による強度の低下。
- 引張強度が銅の80%程しかない
アルミワイヤーハーネス
アルミ線を車両ハーネスに使用するにあたり、太径化を抑えながら大電流に対応するアルミ線には、様々な新技術が採用されることで、車両用ワイヤーハーネスが実用化されています。
性能
アルミは、銅と比較すると、同じ線径では強度が低下してしまうため、導電性の低下を抑えながら強度を確保するために、Fe(鉄)と第二添加元素としてMg(マグネシウム)を加えることで、加工性と引張り強さ、導電率の確保を実現しています。
アルミ電線と端子の接続
元来、アルミの表面は絶縁性酸化膜で覆われているので、電気接続をしにくい素材であるため、圧着過程で絶縁性酸化膜を破壊する必要がある。そのためワイヤーハーネスの接続部であるコネクターに使用される圧着端子には、「セレーションエッジ」と呼ばれる溝が多数付けられており、この溝が酸化膜を破壊することで接触不良を無くし、導電性を確保していると同時に、電線抜けを防ぐ役割をしています。
防食技術
アルミ線と接続する端子は、銅合金にすずメッキを材料としており、母材が銅である端子の接続部に塩水などの電解液が付着すると、異種金属接触腐食により、アルミが溶出してしまう。それを防ぐには、アルミ線の露出部及び端子の接続部も隙間なく保護することが必要となるので、接続部全体を樹脂でモールドする方法が採用されています。
 アルミ線の注意点
- 一般的に販売されている接続端子(ギボシ)では、絶縁酸化被膜を破る事が出来ず導通性が確保できない可能性がある。
- 導通性を確保できたとしても、異種金属材料間の腐食により、接触腐食を起こす可能性が高い。
- 半田付けはできない。できたとしても異種金属材料間の腐食が起きる。
電源の取り出し
- アルミ線が使われていない部分から取り出す。
- アルミ線からの取り出しは、接続部分に、「アルミ電線対応のエレクトロタップ」を使う。
- ナビなどのオーディオ裏から電源を取り出す。
最後に
マツダロードスターをはじめ、様々な車両に採用されるようになってきているアルミ線ですが、メーカーでは、アルミ線は半田での接合ができないことから、事故などで車両ワイヤーハーネスの切断があった際は、補修ではなく、ワイヤーハーネスごと交換としていますので、DIY作業で切断することが無いよう注意して作業しましょう。
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