バイクのオーバーヒート
夏場のツーリングで特に起きやすいオーバーヒート。その症状や原因についてわかりやすく説明し対処法を説明します。
オーバーヒートの症状
オーバーヒートとはエンジンが正常な状態よりも過熱している状態を言い水冷のバイクであれば水温が上がり水温計の針がHの表示(赤い部分)に入っている状態をいいます。症状としては以下のようなものがあげられます。
水温計の付いてるバイクは日頃から見る習慣をつけておくとヒート気味なことに気付くことが出来ますが、最近の車種ではヒートランプが赤く点灯するまで気付きにくい。
これから紹介する症状は上から初期症状で下に行くほどヒートしている状態です。
出力不足
いつもに比べて加速が悪い、いつもより多めにスロットルを開けないと走らないなどの症状が出てきます。
ノッキング
加速時にエンジンから「カリカリ」という金属音が聞こえてきます。
アイドル不調・エンスト
信号待ちなどの停車中にエンジンの回転が不安定でエンストする場合あります。
電動ファンからの熱がいつもより熱い
エンジンの発熱や電動ファンが回った時の風がいつもより熱い。
やや甘い匂いがする
冷却系統に漏れがあると冷却液(LLC)独特のやや甘い匂いがする。ただ嗅ぎなれてないと気づけないかもしれません。
冷却水の吹き返し
空冷車の場合はこの症状はありませんが水冷車の場合エンジン内で冷却水が沸騰・膨張することでラジエータのリザーバータンクに溢れ出て(吹き返し)いる状態。
エンジン回りから煙が出る
冷却水が吹き返しによるものとエンジン冷却系統から漏れた冷却液がエンジンやマフラーなどの高温部分にかかって水蒸気になる場合とがあります。
オーバーヒートの初期症状は、いわゆる熱ダレと言われる症状と同じで出力不足を起こしスロットルを開けても加速が鈍い、加速時に「カリカリ」音がエンジンから聞こえる。停車時にはアイドリングが安定しないという症状が現れる。熱ダレならエンジンの冷却性能がエンジンの過熱を上回ると後は普通に走行できるが、車両に何らかの不調がある場合、オーバーヒートとなり沸騰した冷却水がリザーバータンクから溢れ出てきます。
熱ダレの症状は空冷車によくみられる症状ですが、キャンプツーリングなどで荷物を積み猛暑日の渋滞などでは冷却系統に異常がない水冷車でも発生することがあります。この様な過酷な状況では無理をするとエンジンに負担をかけますので停車してエンジンを冷ますようにしましょう。
オーバーヒートを起こす要因(水冷車)
- ラジエータのフィンの曲がりや埃や泥による詰まり。
- ラジエータ内部の水路の詰まり。
- サーモスタットの開弁不良。(開かないとヒート、閉じないとオーバークール)
- ラジエータキャップの加圧不足(加圧することで沸点を上げている)
- ウォーターポンプの軸の焼き付き等の固着
- ウォーターポンプのインペラ(羽)の溶損
- 電動ファンの破損
- 電動ファンモーターの不良
- 電動ファンスイッチの不良及び特性ズレ(温度を感知し電動ファンを回す)
- 冷却系統の水漏れによる冷却水不足。
- エンジンのヘッドガスケット抜けによる冷却水の減少
- 混合気が薄いことによる燃焼温度の上昇
- 逆輸入車で日本の環境に合っていない
ほとんどが冷却系統の不具合で修理が必要なものばかりですがラジエータフィンの曲がりや汚れに関しては修正と掃除で修復できますね。逆輸入車で日本の環境に合っていないものはそれなりの対策をするしかありません。
まれに細かい埃や木くずのような埃が表面上気が付かない目詰まりを起こしていることがあるので、洗車の際にラジエータのフィンが水圧で曲がらない程度に水で洗い流した時、出てきた水が汚れてたらフィンの隙間に汚れが詰まってた証拠です。予防にもなるので試してみてください。
オーバーヒートを起こす要因(空冷車)
- エンジン冷却フィンの汚れや詰まり
- オイルクーラーのフィンの曲がりや詰まり
- 混合気が薄いことによる燃焼温度の上昇
- 外気温が高いのにエンジンに高負荷をかけた
混合気が薄いのが原因以外は、対策としては涼しい時間を選ぶのと遠回りでも信号が少なくて渋滞しないルートを走るしかないですね。
水冷車の場合、原因は冷却系統の不具合がほとんどですが、空冷車に関しては不具合が無くてもエンジン自体に風を当てて冷却する仕組みですので、渋滞等ではどうしてもオーバーヒート気味になります。
オーバーヒートになったらどうするべき?
オーバーヒートだとわかったとしても経験がないとどうしていいかわからず困りますよね。空冷車はエンジン冷ます以外にできる対処がないので、水冷車を中心に説明していきます。
何よりも安全確保
オーバーヒートを起こした状態で走り続けることは、エンジンに深刻なダメージを与えてしまう可能性がありますし、エンジンが止まり立ち往生することにもなりかねません。まず安全に停車又は他の車の邪魔にならない場所まで移動します。この時なるべく低回転でエンジンの発熱を押さえラジエータ及びエンジンに風があたるようにゆっくり走行してください。風通しが良く日陰があればベストですが停車が優先です。停車してから押せるようであれば移動してもいいでしょう。
まずは現状確認
状況にもよりますが停車時点で吹き返しが収まっているようなら、しばらくアイドリング状態で水温計を確認してください。もし下がってくるようなら単純に冷却水が減っているだけかもしれません。その場合は以下で説明するリザーバータンクに水を入れるだけで走れるかもしれません。
間違ってもこの段階でラジエータキャップを開けないでください。沸騰した冷却水が噴出してやけどをしてしまいます。エンジンやマフラーも高温となっており少し触れただけで火傷するので注意。
水冷の場合はイグニションをオンにしておくことで電動ファンが回り早く冷却することができます。
最近のインジェクション車は押しがけができませんのし、バイクのバッテリーは車に比べ容量が小さいのでバッテリー上がりにはくれぐれも注意してください。
リザーバータンクの冷却水を確認する
- エンジンが少し冷めてきたらラジエータのリザーバタンクを確認
- 冷却液が減っていたら緊急措置として水道水を入れてください。
- エンジンが冷める時に冷却水を吸い込んでいきます。
水漏れを点検する
エンジンを冷ましている間に吹き返していたものとは別のところからの水漏れを点検します。
- ラジエータ本体・ラジエータホース・エンジン各部からの水漏れ
- 車体の下に水が垂れていないか確認
- 冷却水の色(赤とか緑)の湯の華のような冷却水が熱で乾燥したカスがホースの継ぎ目などに付着してないかを確認
ラジエータ内の冷却液を確認する
- 更にエンジンが冷めてきたらラジエータキャップを開けラジエータ内の冷却液を確認します。
- ラジエータ内の水が減っていたら、とりあえず水道水を補充。
- 補充後に水が流れ出てないか確認。
キャップを開けるときはしっかりとタオルなどを当てゆっくりキャップを回し押さえたまま圧を抜くつもりでゆっくりキャップを取り外してください。冷却水を補充するときは吹き返しがあるかもしれません。いつでも逃げれるようにしておいてください。
エンジン始動冷却系統エア抜き
- 水が口いっぱいまで補充出来たら、ラジエータキャップを付けないでエンジンを始動します。
- 水温に注意しながらラジエータの口から泡が出なくなるまでエア抜きを行う。
- 溢れたり減ったりを繰り返しながら水が減るので減った分を補充する。
- ラジエータの口から泡が出なくなったらエア抜き完了。
- (この時細かい泡がいつまでも出ていたらヘッドガスケットが抜けている可能性があります。)
- キャップを閉めて大きな水漏れが無いか再度、確認してください。
- (キャップを閉めると冷却系統の圧力上がり漏れてくることもある)
最終判断
小さな水漏れが原因で冷却水が不足してのオーバーヒートであれば、冷却水を補充しながら走ることは可能ですが、ここまでの作業が怖くてできなかったり、出来たとしても大きな水漏れがある、水温が再び上がるといった場合はロード―サービスを呼んで搬送してもらう方がいいでしょう。
応急的に入れた水道水は速やかに冷却水(LLC)に入れ替えてください。
通常の冷却水は原液を水で割って使用するのですがエバンスの冷却液は原液のまま使用できエンジン内部の金属の腐食を抑え高い冷却効果を持っているのでお勧めです。ハーレー用となっていますが他の車種でも使えるはずです。
冷却水(クーラント)を添加することでクーラントの泡立ちを抑えオーバーヒートの抑制につながるのでワコーズのクーラントブースターを予防の意味で入れておいてもいいかもしれません。またクーラントの交換サイクルを延ばすのでお財布にも優しいです。
冷却水が滲んで湯の華のような漏れ跡がある場合の予防や少しの漏れの抑止ができます。問題が無くても入れておけば滲んだ場合に漏れ出たところを塞いでくれますのでツーリング中にトラブルを起こすリスクを軽減してくれます。