(2021-02-01)フューエルワン F-101の用途・特徴を追記
水溶性のデポジットができる背景
近年、直噴エンジンやハイブリッド、アイドリングストップなどが付いた車両が増えたことで、燃焼室内に水溶性のデポジットが発生する頻度が増えていますし、エンジンオイルの添加剤成分が水溶性デポジット(流酸塩)となりことから、走行距離の多い車両も発生する可能性が高くなります。
これに対応するために各社から、界面活性剤を配合し水溶性のデポジット(硫酸塩)を落とす製品が販売されています。
燃料の添加剤としては、定番中の定番である和光ケミカルのフューエルワンは、水溶性のデポジットや硫酸塩については一切触れていません。
従来の油溶性デポジットには、対応していないと思っていましたが、調べてみたところ水溶性のデポジットにも適合しているようなのです。
企業秘密
フューエル1の配合量については、企業秘密のため詳細は記載されていません。
わかる範囲だと、おおまかに次のようになっています。
石油系高沸点溶剤
芳香族系炭化水素溶剤で、改質ガソリン製造の為の接触改質装置から得られる芳香族分を分留し、分留されたベンゼン、トルエン、キシレン残分を蒸留すると得られる溶剤で添加剤希釈などに使われるようです。
ポリエーテルアミン系清浄剤
ワコーズのみならず燃料添加剤のポリエーテルアミンを供給しているのは、シェブロンジャパン(旧オロナイトと思われますが、フューエルワンで使用されるポリエーテルアミンは、高純度なものを和光ケミカルが優先的に入手しているようです。そのための他社では入手が出来ずくやしがっているとか。本当なら相当、高品質なものなのでしょうね。
ポリエーテルアミンの配合量は公開されていません。
ポリエーテルアミン100%を謳う商品もありますが、”高純度”が曲者で、例えば
- 純度が100%で配合量80%の製品
- 純度が80%で配合量100%の製品
この2つでは清浄効果は同じといえるようです。
おまけに、100%ということは他の効果を持つ添加剤を入れることが出来ないことになります。
燃料系その他添加剤
こちらも、公開されていないのでよくわかりませんが、防錆剤や水抜き剤などが入っていると思われます。
危険有害成分
この記事の一番の注目点ですが、旧フューエルワン(F-112)から現行のフューエルワン(F-101)で有害成分の記載変更されていました。
危険有害成分 旧フューエルワン(F-112)2016年6月1日
- 1,2,4-トリメチルベンゼン(ブソイドクメン)
- 1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)
- 1,2,3-トリメチルベンゼン(ヘミメリテン)
- 1-プロパノール
トリメチルベンゼン
芳香族炭化水素で、刺激臭のする無色の液体の可燃性の液体で、水にほとんど溶解しない。
プロパノール
工業及び家庭用の多目的溶剤で、各種の化学化合物の製造における中間物質として使用される。
危険有害成分 フューエルワン(F-101)2016年12月13日
- ポリオキシチエレンアルキルエーテル
現行商品のF-101では、トリメチルベンゼンやプロパノールが無くなり、このポリオキシチエレンアルキルエーテルのみが危険有害成分となっています。
ポリオキシチエレンアルキルエーテル
家庭の台所用品や洗濯用の洗剤として使われるほか、業務用にも使われています。
化粧品のクリームや乳化剤などのほか、農薬の補助剤、医薬品の乳化剤や分散剤にも用いられる界面活性剤。
この界面活性剤の用途を見ると、「油と水」、「乳化」、「分散」というワードがでてきます。このことからも水溶性と油溶性分の混ざった水溶性のデポジットを柔らかくして剥がすことがイメージできますよね。
フューエル1は、モデルチェンジのタイミングで、、ちゃんと界面活性剤を配合していたんですね。
というか、水溶性のデポジットに対応する必要を感じ、モデルチェンジしたのだと思います。
容量が300mmから200mmに減ったのは開発費の回収と、こんなご時世ですから値上げしにくいので容量を減らしたって感じでしょうね。
WAKO’S フューエル1
フューエルワンの説明では以下のように記載されています。
最高純度のPEAと相性の良いIVD清浄剤を組み合わせ高濃度には配合し、その効果を最大限に引き出す成分構成としたことにより、従来のエンジンはもちろん、近年の省燃費エンジンに最適化し清浄効果を強化しました。
燃料に添加するだけで燃焼室・吸排気バルブ・インジェクターなどに堆積したカーボン・ワニス・ガム質を除去し、新車時のエンジン性能を取り戻します。また燃料の酸化劣化や燃料タンクの腐食を抑止し、潤滑性を高めることが可能で、燃料に必要な性能全般を総合的に引き上げることが出来ます。経年車や初めて清浄剤を使用車両には2回連続使用がさらに効果的です。
和光ケミカル株式会社 デジタルパンフレット
IVD:インテークバルブデポジット
上記の中に記載されているIVD(インテークバルブデポジット)がどうやら水溶性デポジットの事を指し、IVD清浄剤と記載されているのが、界面活性剤の事を指していると解釈できます。
下記で追記した清浄性能強化の項目で、IVDを改良と記載があり、従来から添加されているものを改良したようです。よって界面活性剤の事ではなくその他の清浄剤を示しているようです。もしかするとフューエルワンにも「シュアラスター LOOPパワーショット」と同じくポリイソブデンアミン(PIBA)でインテークバルブのデポジットを洗浄と再付着防止をしているのかもしれません。
油溶性の成分(トリメチルベンゼンやプロパノール)を界面活性剤(ポリオキシチエレンアルキルエーテル)に置き換えることで、水溶性のデポジットに対応できるようにしているようですね。
日産が販売していたPIT WORK F-1という商品がWAKO’SのF-112のOEMだったのですが、こちらもモデルが変わっているようです。
確認してみたところ、F-1からF-ZEROに変更になっているものの中身はWAKO’Sの旧FUEL-1だそうです。それと自動車用に出している商品なので、FUEL-1から防錆剤成分を抜いているのでタンクの錆止め効果は無いそうです。
追記(2021-02-01)
現行のフューエルワンの特徴について追記しておきます。
用途
- 一般的な条件で、車両・小型船舶・産業機械などの内燃機関。
- ガソリン・ディーゼル兼用。
- 2サイクル・4サイクルどちらも適合。
- ハイブリッド・PHEV車。
清浄性能強化
清浄剤を活かす成分構成・清浄剤の高純度化・IVD用清浄剤を改良することにより、燃料ラインに堆積したワニス・デポジット・カーボンを強力に洗浄できるようになったとしていますので、改良の主軸はPEAと相性の良い界面活性剤の使用と、もともと他社よりも高純度と言われているPEAの純度をさらに上げたこと、そしてインテークバルブのデポジットの清浄剤も界面活性剤と相性の良いものに変更したという事みたいですね。
添加量の最適化
燃料タンクの小さな車両でも使いきれる添加量(20~60L/1本)となっていますが、PEAを高純度にしたため効果が高まり、少ない量の使用でよくなったのからか、コストダウンなのかはわかりません。あるいは両方?
潤滑性の向上
インジェクターや燃料ポンプ、ピストントップランド周辺の潤滑に影響する潤滑剤を強化しているようですが、これはフューエルワンはガソリンのみならず、ディーゼルも兼用になっていることからだと思います。なぜなら環境問題により低硫黄化した燃料が流通しており燃料ポンプやインジェクターの潤滑性が不足気味となっており、それを補うことを目的とした強化だと思われます。
酸化防止性能
燃料が酸化や劣化する事で発生しやすくなる、ガム質やワニスを抑制するために酸化防止成分を配合しています。
防錆性能(気化性防錆)
燃料タンクの内部の錆を防ぎ、腐食に伴う燃料のトラブルを予防しています。
最近、フューエルワンやプレミアムパワーの偽物が出回っているようです。ご注意ください。
最後に
和光ケミカルは絶対的な自信なのか、競合他社が出てきて様々な謳い文句で販売してるんだから、もっと「水溶性のデポジットが」とか「硫酸塩が」と宣伝してもよさそうなものなのに、早い段階で対策しているにも拘らず、さらっとというかIVD洗浄剤なんて書いてるだけなのは、余裕でしょうか?
なんにせよ使う側にとっては、従来から評判の良いフューエルワンが車種やエンジンの形式を問わず幅広く使えるのはうれしい限りです。
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