燃焼室内の水溶性デポジットを落とすカギは界面活性剤にあり!

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トヨタと日本ケミカルが連名で出している特許の中で、ポリエーテルアミン(PEA)やポリイソブデンアミン(PIBA)について油溶性のデポジットについての洗浄効果を認めているが、エンジン仕様、燃料の品質、使用環境の多様化により硫酸塩のように水溶成分を含むデポジットの堆積の増加しているとの記載を見つけた。

従来品は、非イオン界面活性剤と陰イオン性界面活性剤を組み合わせていたが、少々問題があり陰イオン性の界面活性剤を使用しなくても十分な清浄性を持たせることが可能になった特許のようです。

この少々問題な部分ですが、容器保管時やタンクに入れた際にアミン系の清浄成分が反応して異物が発生することがあるようなのです。

異物が発生するとフューエルポンプの詰まりとなり、出力低下始動不能を引き起こす可能性があります。

エンジン内を綺麗にするつもりが、異物が発生したのでは逆効果ですよね。

アミン系の清浄成分のみでいいのか、それとも水溶性のデポジットにも対応したクリーナーがいいのかを詳しく解説し、最新の技術が採用されている商品も紹介します。

デポジットの分類

デポジットはどうやってできるのでしょうか?

その生成源には、大きく2つに分類され燃料由来のデポジットとエンジンオイル由来のデポジットがあります。それ以外にもエンジン内に吸入する外気に含まれる粒子状物質の影響も指摘されています。

さらに下記の性状が加わり複雑に変化していきます。

・エンジンの種類(ディーゼル、ガソリン、LPG)・堆積部位・運転条件

・生成要因(生成源、生成環境、生成経路)

燃料起源のデポジット

未燃焼ガスに由来する炭化水素(ハイドロカーボン)と、部分酸化物や炭化物が共存している。

これらは4つに分類される。

・HC重質物

・脂肪族HC酸化物

・芳香族HC酸化物

・HC炭化物

エンジンオイル起源のデポジット

エンジンオイルの主成分も燃料と同じHCであるため、燃焼し燃料と同じデポジットを生成する。

エンジンオイルの消費量は燃料の1/1000以下なのでその影響は少ないみたいですが、PCV経由のオイルミストが増えたり、オイル上がりやオイル下がりがある車両は、燃焼室内に入るオイル量は増えることになります。

この燃焼室内に侵入したオイルは、受ける熱量により3成分に分類できます。

この中で、問題となる成分が発生するのは、高酸化物です。

微酸化物

150℃以下の部位に発生。主成分はベースオイル。PCVや吸気系で観測される。

部分酸化物

200から300℃の部位に発生。主成分は濃縮されたオイル添加剤とその酸化重化合物。インテークバルブや燃焼室で観測される。

高酸化物

350℃以上の部位に発生。主成分はオイル添加剤に含まれる無機元素の酸化物(リン酸塩、硫酸塩など)また燃焼ガス中の硫黄酸化物(SOx)とオイルの中の金属系添加剤との反応による硫酸塩も共存する。高温運転条件下の燃焼室内及び排気系、EGR系で観測される。

外気粒子状物質の起源によるデポジット

粒子状物質の一部がエアクリーナーをすり抜け吸気系に堆積することが知られていて、吸入外気に含まれる粒子状物質の発生起源の違いにより分類される。

ここでも微量ながら、土壌粒子の中に硫酸塩が発生する要因が存在していますね。

土壌粒子

土壌から飛散する粒子群で、ケイ酸塩、金属酸化物、硫酸塩、炭酸塩などが代表的な成分。

煤塵粒子

自動車および工場から排出される粒子状の粒子状の燃焼生成物であるカーボン系の煤が主成分。

二次生成粒子

大気中に存在するSOx、NOx、アンモニアなどのガス成分同士が反応して二次的に生成した粒子で硫酸アンモニウムや硝酸アンモニウムが代表的な物質。

エンジンデポジットの性状解析

硫酸塩

このデポジットはエンジンオイル由来高酸化物は、高温に晒された時に生成される無機系添加剤(Caスルホネート、ジアルキルジチオリン酸亜鉛)の燃焼灰成分で、添加剤の中に含まれる成分が酸化や反応によるものと大気より吸い込んだ土壌粒子が原因のようです。

硫酸塩は金属を溶かした時に生成される塩で、水に溶けないものもあるが一般的に水に溶けやすい物質が多い。

水溶性のデポジットが発生しやすい車両とは

トヨタ企業サイト|トヨタ自動車75年史|技術開発|エンジン
直噴型のエンジン

直噴エンジンは空気を高温高圧縮した所に直接、燃焼室内に燃料を噴射するが、燃焼時間が短いため燃えカスが出やすい。インジェクターが直接燃焼室に出ているので、インジェクターノズルにデポジットが堆積しやすい。

またポート噴射とは違いインテークバルブを通るのは混合気ではなく、空気のみなので燃料に含まれる清浄効果が無く吹き返しによって、デポジットが堆積しやすくなります。

高回転・高負荷で走る機会の多いターボ車・軽自動車やバイク

燃焼室温度の上昇やブローバイガスが増加しデポジットが増加しやすい。

オイル消費

走行距離が多い、または年数が経過した車両に多いオイル上がりやオイル下がりのある車両は、燃焼室内に入るオイルが増え、含まれる添加剤成分も増えるので硫酸塩も発生しやすくなる。

アイドリングストップ付き車両・ハイブリッド車

停車のたびにアイドリングストップを繰り返すと、不燃焼ガスが発生しカーボン・デポジットが発生しやすくなります。

土の上を走る機会が多い車両

要素としては小さいのでしょうが田舎で未舗装路を走ったり、土ぼこりが多い所で走る機会が多いのなら硫酸塩の堆積量も多くなる考えられます。

界面活性剤

通常のカーボンやデポジットには、油溶性のポリエーテルアミン(PEA)やポリイソブデンアミン(PIBA)が吸着・除去・燃焼させるのに対して水溶成分を含むデポジットには吸着することができない。水溶性デポジットを除去する方法として、非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤とを併用するクリーナーが出てきた。

しかし、非イオン性界面活性剤に組み合わせる適切な陰イオン海面活性剤をうまく選定しないとポリエーテルアミン(PEA)やポリイソブデンアミン(PIBA)及びハイオクガソリン中の洗浄成分とアミン系清浄成分が陰イオン界面活性剤と反応して燃料タンク内に異物を発生することがあるそうです。

その異物を嫌い、陰イオン性界面活性剤を配合しないと、水溶性デポジットの清浄効果が著しく低下するというジレンマを抱えていたんですね。

そこでトヨタ日本ケミカル連名で出願されている特許では、非イオン性界面活性剤とアミン系清浄成分とを必須成分として陰イオン性界面活性剤を配合しないで、水溶性デポジットを洗浄効果はあるけど、異物の生成を回避できる方法を見つけたとあります。

インジェクタのデポジットを洗浄するためのクリーナー 特許第6034098

アミン系清浄成分に組み合わせる非イオン性界面活性剤には、さまざまな種類がありますが、最も好ましHLBの値としては、2.8~9.5の範囲が良くアルキルフェニルエーテル型の非イオン性界面活性剤や、secーアルキテルエーテル型の非イオン性界面活性剤が好ましいようです。

HLB値(Hydorophili-Lipophile Balance) 界面活性剤の水と油の親和性を表す値で、0から20の範囲内で0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高い。

好ましいHLB値が2.8~9.5ですので油溶性のポリエーテルアミンとの親油性、要するに溶け込みやすいものを選んでいるんですね。

この特許の製品はどれ?

企業秘密なのか製品を見ても、ポリエーテルアミン(PEA)やポリイソブデンアミン(PIBA)と界面活性剤と記載されてはいても界面活性剤の種類は記載されていなかったり、ポリエーテルアミンすら書かれていなかったり、どれがそうなのかよくわからないので、日本ケミカルに問い合わせてみました。

かなりデリケートな問題のようで、なかなか教えてくれませんでしたが、とりあえず教えていただけたのは、マツダと三菱のデポジットクリーナーが当該商品になるそうです。

日本ケミカル工業株式会社

マツダデポジットクリーナー
三菱 フューエルシステムクリーナーⅡ

フューエルシステムクリーナーⅡは、用品店や部品商経由の販売がのようでネットでの販売はしていないようですね。

PITWORK F-Premiam(ガソリンエンジン用)

資料によると、多様化するあらゆるにより良く適応する最新添加剤成分を配合しているようなので、非イオン性の界面活性剤を使用していないのかもしれません。

配合の割合は、ポリエーテルアミン(PEA)が全体のおよそ40%程で、新清浄成分として界面活性剤とグリコール系の溶剤を配合し水溶性のデポジットを落とすようです。そのほかの成分として水抜き剤やオクタン価増加剤が含まれているようです。

WAKO’S  FUEL-1(フューエルワン)

ポリエーテルアミン配合のガソリン添加剤では、定番のフューエルワン。

フューエルワンのポリエーテルアミン(PEA)の配合量はかなり多いようですが、100%ではありません。

他の商品で、高純度PEA100%を謳っている商品がありますが、この”高純度”が曲者でピンキリのようです。

PEA100%配合といっても、純度が80%の商品とPEA80%配合で純度100%なら同じで効果となるようです。

フューエルワンは、他社製品よりも高純度で配合量が100%じゃなくても、他社製品を寄せ付けない清浄性を持っているようです。

最近、話題なのはシュアラスターのLOOP ポリエーテルアミン(PEA)やポリイソブデンアミン(PIBA)のダブル配合がウリですね。

最後に

詳細は不明ですが、ドライブジョイ(トヨタ)、PITWORK(日産)やスバルのものも、現在販売されているものは改良版となっているので、もしかすると陰イオン性の界面活性剤を使用していない可能性もあるのですが、PITWORK(日産)のFプレミアムは、製造は日本ケミカルですがサプライヤーは日本オイルサービスなので、日本ケミカルへの問い合わせでは、卸先への配慮などもありマツダと三菱のデポジットクリーナーのみ教えてくださったのかと思っています。

水溶性のデポジット(硫酸塩)が発生しやすいのはダントツで直噴エンジンだと考えられますが、アイドリングストップ付きの車両やオイル消費のある車両もデポジットクリーナーを使う方がいいと思います。

一番問題となる部位は、インジェクターノズルなのでキャブ車や直噴エンジン以外は従来のポリエーテルアミン(PEA)やポリイソブデンアミン(PIBA)を配合したガソリン添加剤で問題なさそうです。

界面活性剤が入っている添加剤については、非イオン性界面活性剤のみを使用したものを選ぶようにした方がよさそうですね。

最後になりましたが、ガソリン添加剤の使用量はガソリン量に対して1%のものがほとんどです。

多く入れるとよく汚れが落ちそうな気がしますが、清浄性に変化がない上にオイルシールなどのゴム部品を痛めたりエンジン不調を引き起こす可能性もありますのでご注意ください。

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