エンジンオイルの交換時期・メーカーの指示を信用するな!

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人によっては、「エンジンオイルの交換時期なんか気にしていない」「車検ごとにやっている」「そもそも交換って必要なの?」という方が多いのも事実ですが、ちゃんと交換時期を意識している方でも、「自動車メーカーは15.000キロごとと言っているよ?」と思う方もいらっしゃると思います。しかし実際は、そうではないのです。内容をよく理解し、ご自分の愛車にあったオイル交換サイクルが必要ですので、なぜ必要なのか順序だてて解説していきます。

なぜエンジンオイルの交換が必要なのか?

エンジンオイルと言えば「潤滑」と思い浮かぶのではないでしょうか?まさしくその通りで、内部で燃料を燃焼(爆発)させている為、高温となる中で様々な部品が摺動しています、これらを安定して潤滑を行う重要な役割を担っています。

しかし、役割はそれだけではなく、主目的の「潤滑作用」以外に、「防錆作用」「洗浄作用」「密閉作用」「冷却作用」があります。

潤滑作用エンジン内部の各部品を滑らかに摺動させる働き
防錆作用エンジン停止中は、エンジンオイルはオイルパンに戻るので、エンジン内部のパーツが露出してしまいますが、付着しているオイルの防錆作用により錆びるのを防いでいます。
洗浄作用吹き抜けガス(ブローバイガス)などによる不純物や摩擦などで生じた汚れを分散し、オイル内部に取り込む作用
密閉作用シリンダーとピストンの間はピストンリングで密着していますが、それでも空いている、わずかな隙間をオイルで埋めて密閉率を上げています。
冷却作用ピストンの摺動により燃料を燃焼(爆発)させ動力を得る際に発熱するエンジンを冷却する作用

エンジンオイルの持つそれぞれの作用は、距離や使用期間により劣化し、燃費の低下を引き起こすだけでなく、エンジンの故障につながるため、定期的な交換が必要となります。

エンジン性能の向上

1980年代中盤以降、地球温暖化の要因である二酸化炭素の節減が課題となってきたことから、限りある石油資源の抑制として環境対応や燃費の改善が課題となってきたことを背景に、低燃費化と共にエンジンの性能が飛躍的に向上しています。

直噴エンジンン

ほとんどのガソリンエンジンは圧縮上死点前に点火プラグによって点火、膨張工程で混合気中の火炎が広がります。熱効率を求め圧縮比を上げると、燃焼室や混合気の温度が高い状態となり、高負荷時にノッキング(異常燃焼)を起こすのを防ぐため点火時期を遅らせる必要が出てきます。

インテークポートに燃料を噴射するポート噴射では、気化潜熱の冷却効果により異常燃焼(ノッキング)を抑えるには、シリンダー内に吸い込まれる前に気化潜熱の冷却効果を失うことから、かなり多めの燃料噴射が必要でした。

一方、直噴エンジンでは、燃焼室内に直接、燃料噴射することで、少ない燃料で効率的に燃焼室内の温度を下げることができるため異常燃焼を起こしくく、点火時期を遅らせる必要がなくなります。このことから、圧縮比を上げることができ、高出力・高トルクを引き出し、かつ燃費の良い走行を実現させているのです。反面、水溶性のデポジットが発生しやすいという問題も生じています。

フリクションロスの低減

フ リクシ ョンロスは、中 ・高速回転域でのピス トンリング・ピ ス トン・コ ンロッ ドでの占める割合は、エン ジン回転の上昇に従い増 加 し、全 体の40~50%となる。低速回転域では動弁系のロスが大きくなり、使 用頻度の高 い低 回転域 では、全体 の20~30%を 占めています。

  • ピ ス トンスカー トへの固体潤滑焼成膜
  • 摩擦調整剤入 り低粘度エンジンオ イル
  • バル ブスプリングの荷重低減
  • バルブスプリングの摺動面積低減
  • クランクベアリングの潤滑性能
  • クランクシャフトやコンロッドのメタルベアリングの性能向上

様々なフリクションロス軽減のために新たな技術が投入されており、高出力・低燃費に貢献しています。

エンジンオイルへの負担

直噴エンジンンは、燃焼室に直接、燃料を噴射するため燃焼するまでの時間が短く、局所的に未燃焼のガスができやすく、完全に気化されず残ってしまいます。つまり、吹き抜けガス(ブローバイガス)によってエンジン内部が汚れやすくなるため、オイル交換サイクルを早める必要があるのです。またフリクションロスを軽減するために、エンジンオイルの低粘度化が進んでおり、「5W20」でもサラダオイルのようにあり「サラサラ」なのに、現在では、さらに低粘度オイルが使用されている車種もあります。低粘度のオイルは、流れ落ちやすくドライスタート時には、金属同士が削れるリスクや走行時にも油膜切れのリスクを伴います。

このような状況の中、確実にエンジンオイルのへの負担が増えているのです。

エンジンオイルの交換時期

エンジンオイルの交換時期は、どれぐらいで行うのが良いのか?と思いますよね。そこで自動車メーカーのハンドブックをみると、だいたい10,000~15,000キロとなっています。通常5,000キロもしくは6ヵ月ごとと言われますが、自動車メーカーでは、オイルに対する要求が高まっているのにも関わらず交換サイクルが伸びているのです。エンジンオイルの性能が向上してるとは言え、これは何故なのか?

           
シビアコンディション

販売シェアが最も高いトヨタ自動車では、オイル交換の目安を以下のように記載しています。

車種標準交換時期シビアコンディション時の場合
ガソリン車(ターボ車除く)15,000km、または1年7,500km、または6ヶ月
ガソリンターボ車5,000km、または6ヶ月2,500km、または3ヶ月
ディーゼル車5,000km~20,000km、または半年~1年ごと2,500km~10,000km、または3ヶ月~半年ごと
車種によって異なりますので、詳しくは取扱書を参照いただくか、お近くのトヨタのお店にお問い合わせください。
あくまでも目安です。早め早めの交換をおすすめいたします。
使用状況により劣化状態は変わります。また、エンジンオイルはクルマを使わなくても自然に劣化します。

シビアコンディションの条件:悪路走行が多い、走行距離が多い、山道など上り下りの頻繁な走行等

トヨタ自動車

シビアコンディションの要件は、国土交通省の指定規則第6条第1項各号ロの点検項目(使用状況が特殊である自動車の追加点検項目)】で示されています。

  • 悪路(凸凹道、砂砂利、雪道、未舗装路等)
  • 走行距離大
  • 山道、投降坂路
  • 短距離走行の繰り返し
  • 低速走行の繰り返し
  • 高地走行が多い

国土交通省 地方運輸局 シビアコンディション判定条件

シビアコンディションは、エンジンオイルのみに適用されるものではなく車体の構成部品に適用されますが、エンジンオイルに着目して考えてみます。

悪路(凸凹道、砂砂利、雪道、未舗装路等)(走行距離の30%以上)

悪路走行は、おのずと低速走行となり低いギヤでを使用する事となるので、エンジンに負荷のかかる運転といえ、結果エンジンオイルの劣化を進めることになります。

走行距離大(年間走行距離20,000Km以上)

年間走行距離20,000Km以上とされていますが、走行距離が増えると、おのずとアクセルのON・OFFが多くなるため、ピストンとシリンダーの間を吹き抜けるブローバイガスが増加するためエンジンオイルの汚れ、劣化に繋がります。

年間20.000km以上の走行をする車両では、5年もすると100.000kmを超えることになりますが、次第に、ピストンとシリンダーのすき間が広がりブローバイガスが抜けやすくなるだけではなく、エンジンオイルを掻き揚げて一緒に燃やしてしまう、オイル上がり、バルブシールから燃焼室にオイルが入り込むオイル上がりが起きてきます。

山道、投降坂路(走行距離の30%以上)

山道では、アクセルのアクセルのON・OFFが多くなりますし、上り坂ではアクセルを踏み込むためエンジン回転が上がります。下り坂では、エンジンブレーキによりエンジン回転が上がることと、ピストンとシリンダーの間を吹き抜けるブローバイガスが増加するため、エンジンオイルへの負担が大きくなります。

短距離走行の繰り返し(1回約8km以下の走行)

エンジンを始動すると、真横から見た時にピストンは微妙に台形となっています。これはピストンヘッド部は燃焼の熱に晒され膨張するため、熱膨張によって四角になるように作られています。

冷間時は、圧縮圧力が弱く始動しにくいので、燃料の噴射量を増やしてエンジンが始動できるようにしています。このため、短距離走行が多いと、ピストンとシリンダーのすき間が多きときに、大量の燃料を送る機会が多くなり吹き抜けたブローバイガスがエンジンオイルの劣化を早めます。

吸入空気に含まれた水分がブローバイガスと共にエンジンオイルに混入することになりますが、短距離走行では、油温が上がらずオイルに含まれた水分を飛ばす事が出来ずエンジンオイルの乳化に繋がります。またオイルが下がっている状態からのエンジン始動(ドライスタート)が増えるため金属粉によるエンジンオイルの劣化を助長することなります。

低速走行の繰り返し(20km/hの走行が多い)

自動車のエンジンの回転を安定させるのが一番難しい状態がアイドリングです。そのためアイドリング時は、濃いめの空燃比となっていますので、渋滞などで停車・発進・加速を繰り返す走り方では、ブローバイガスの増加によりオイルを劣化させる結果となりますし、燃焼室内にカーボン・デポジットの堆積の原因にもなります。

どうすればいいの?

オイル交換の必要性、シビアコンディションについては、分かったとしても、「どうすればいいの?」と思いますよね。

そう思い、トヨタのお客様センターに問い合わせた所、はっきりとは言いませんが「ほとんどの場所ではシビアコンディションになりますよね」の問いには、「まぁ…」という感じでした。

結論は、メーカーの「シビアコンディション」の指定の距離での交換、オイルの負担が増えていることから考えると、軽自動車、ターボ車、ディーゼル以外の車両では、5.000キロ毎が最低条件ではないでしょうか。

最後に

エンジンオイルの必要性、エンジン性能の向上とエンジンオイルへの負担、シビアコンディションについて説明してきましたが、すべて地球温暖化につながっています。そのなかで自動車メーカーの姿勢も変わってきているように感じています。

私の個人的な意見ですが以前に比べて、交換時期を長く記載するようになったのは、「エンジン性能の向上」部分で記載したように、地球温暖化抑止の為に石油資源の抑制を余儀なくされています。メーカーとしては、オイルの交換サイクルを伸ばしていると企業努力をアピールをしたいこと、各メーカーが競い合って良い車・壊れない車を作ることに専念していた時代とは違い、「メーカーの補償期間だけ持てばよい」といった考えに変わっているように感じています。

ご自分の愛車を長く大事に乗りたいのであれば、「自動車メーカーがそう言っているんだから間違いない」と鵜呑みにせず適切な判断をすることが重要です。

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