グーグルマップを見ていると、和歌山市内を流れる市堀川に架かる鉄橋が良い雰囲気を醸しだしており、橋のバックに和歌山城天守が見えるロケーションが気に入り、この橋について調べてみたところ、この橋は鉄橋を一般道用の橋に転用したもので、同じような橋が近くにあるそうなので合わせて訪問することにした。
中橋と和歌山城
和歌山市内は本町筋を中心に整然とした町並みが形成された城下町となっていることから、周辺に高さのある建築物が立ち並ぶ中で、この様なロケーションが得れるのは城下町ならではかもしれない。
撮影に関して、思ったよりも撮影が難しかった。中橋のかかるこの道路は意外と人通りが多く、また橋のこちら側が交差点となっており、橋の上で車両が信号待ちをすることになるので非常に撮影しづらい。本当はもっと離れた位置から望遠レンズを使い圧縮効果を使いたいところだが、交通量が多く撮影がままならない。時間帯を選ぶなど工夫が必要そう。
この場所に興味を持ったのは、和歌山城が背後に見える事も理由の一つだが、なによりも中橋が鉄橋を転用している事に興味をもった。
中橋
中橋は、日本橋梁建設協会によると、英国製の鉄道用トラス橋を改造・転用したものとあり、全長 30.1mで、現在は道路橋として再利用されている。
もともとは京都府の桂川に掛かっていた鉄道用の単線ボニーワーレントラス橋が、明治時代に徳島県勝浦川に移されていたもののようだ。
戦後の1953年(昭和28年)、第二次世界大戦の和歌山大空襲で焼失した中橋の代わりとして、徳島県で使われていたこの橋は再び移され中橋として使用するため拡幅改造が行われた。
歩道のある側を和歌山城側から。トラス構造が見えず、つるっとした印象。
歩道上から。真横に無骨な鉄骨。
対岸側は封鎖されており入れなかったので、和歌山城側から中橋の下側を望む。対岸側も含めて橋の下が遊歩道になっているためか、照明が取り付けられていた。
中橋は適度に補修が行われており明治時代の橋とは感じさせない非常に綺麗な状態を保っている。色目については意図してかは不明だが、和歌山城の屋根色と良く似ている。ただ和歌山城の方は塗装ではなく、この緑青に見える部分は銅の表面が皮膜に覆われたものです。これが銅表面に付着することで長年にわたり銅内部を守るが、この銅の錆色に似せたのか、それともただの偶然か?
新興橋
和歌山県の名所である和歌山城付近の中橋と生活道路上にある大門川に架かる新興橋。この二つの橋は、いわば兄弟のような存在であるが、綺麗に塗装が施されている中橋に対し、新興橋は長らく放置さているようでサビ具合が古さを感じさせる。観光地である和歌山城にほど近い中橋とJR和歌山駅と紀ノ川沿いを走る国道24号線を接続する名もなき市道にある橋で、これだけの差がある事に驚かされる。どちらも土木遺産に登録されているのに、えらい差だ。
中橋と同じく構造はポニーワーレントラス橋だが、桂川で使われていた長い橋を切断して設置しているのではなく、設計が単線100(30.46m)フィートのポニーワーレントラス型鉄橋として設計されており、これを標準トラス桁として長さに合わせてつなぎ合わせることで、長い橋を形成していました。そのため長さが約30mの橋ならば、1ユニットで事足りるので転用しやすかったのかも。また、この橋も徳島の中橋とは別の所で使われていたものが、再び転用されたようだ。転用時期については、同じ時期とされているが、正確には1954年(昭和29年)3月に新興橋が開通している。
外観的な違いとして傷み具合はともかく、中橋にはあった親柱がない。構造部分では、斜材の数が前者が16本に対して新興橋が14本しかないことが挙げられる。
後で調べてみると、一般社団法人 日本橋梁建設協会の「現在・供用中の明治の橋(100年を超える橋)」では、中橋(その他新興橋)の支間30.1mとしているが、実際は27.1mのようだ。3m短縮されていることから斜材の数が少ないようだ。
親柱が設置されていないためこの橋の名を現地で直接知る事はできないが、歩道橋の銘板から、この橋が大門川に架かる「新興橋」とわかる。
中橋では、歩道橋が張り付いていたが、こちらは分離した歩道橋が設けられている。
交通量が意外と多く、駐車スペースに困りそうな場所ですが、橋のすぐ隣がコンビニの駐車場になっており、自動車でも横付け可能なのがありがたい。また、対岸にはハシゴが設置されている。非常に綺麗なので最近設置されたもののようだ。
対岸のはしごを降りた所から撮影。
橋の裏側から見ると、中橋と同じような構造ですが斜交いの入り方や補強版の有無が異なっている。これは拡幅及び短縮改造の影響だと思われる。このよう元は同じ橋であった兄弟橋の差異を探しながら鑑賞できることが中橋・新興橋の醍醐味かもしれない。これらの橋は距離にして3km程離れているだけので、是非合わせて訪問していただきたい。
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