2代目ミライ―ス(LA350S)の上級グレードには、4灯式のLEDヘッドランプが採用されていますが、デザインと相まって変則的な発光をするのため、ハイビーム側で光軸測定の際に注意が必要なので説明します。
ヘッドライトの光軸
光軸調整について簡単に説明しておくと、自動車のヘッドライトは、道路運送車両法によって、ハイビームは100メートル先、ロービームは40メートル先の障害物が確認できるように定められています。
そのため車検時には道路運送車両法に適合しているか、光軸や光量の測定を行い、基準値から外れている場合は調整を行う必要があります。
走行用前照灯 基準値
左右27センチ、上10センチ、下はその車のライトの照明部中心高さの1/5
ロービーム測定
道路運送車両法上では、ハイビームを「走行灯」、ロービームを「すれ違い灯」と呼びます。これは、道路運送車両法が制定された当時は、交通量や街灯も少ない時代でしたので、普段はハイビームで走り、対向車のある時にロービームに切り替える事を想定していたためです。しかし、交通量が増え街灯設備も充実している現代においても、走行灯であるハイビームでの光軸検査が行われていました。
また、自動車用のヘッドライトに使われていた光量の低い「シールドビーム」や「ヨウ素球」の時代から明るい「ハロゲン球」へと変わり長らく主流となっていましたが、「HIDバルブ」が登場したことで状況が一変しました。今までのハロゲンバルブよりも格段に明るい分、対向車にとっては眩しいのです。
当初はのHIDは、ロービームが「HIDバルブ」、ハイビームが「ハロゲンバルブ」を使う4灯式でしたので、ロービーム側の光軸検査は行われないことから対向車の運転の妨げとなるという問題が出てきました。そのため平成27年9月1日より、車検時の光軸検査はロービームで行うように変更されています。
一時主流であったHIDでしたが、現在では「LEDヘッドランプ」が主流になってきています。
ハイビーム測定
先程、ロービーム測定に変わったと説明しました。それなのに「なぜハイビーム測定が必要なのか」と思われるかもしれませんが、陸運局や軽自動車検査協会の検査コース内で光軸測定を行う際、ロービームでは光軸がでない、もしくは光量が基準を満たさない車両があるのです。そのためロービーム測定を行い基準を満たさない場合に限り、ハイビームでの光軸測定が行われています。
ハイビームの光軸測定時は、2灯式では、ハイ/ローの切替を行うだけで大丈夫ですが、4灯式は、ロービーム側の光を遮光する必要があります。
ミライ―ス(L350S)
ここからが今回の本題ですが、ミライ―スの2代目となる、LA350Sの上位グレードには、LEDヘッドライトを採用していますが、そのデザインを見ると、ヘッドライトの真ん中で区切ったようなデザインになっているので、上下の4灯式ヘッドライトに見えますが、実はそうではなく内側がロービーム、外側がハイビームとなっています。デザイン上区切りの様に見える部分の奥まった所でLEDが発光するため目視で発光点が確認しずらく、上下のヘッドライト内のリフレクターに反射するので、ヘッドライトテスター上では発光点が2か所で現れます。
その検査コースで使われているヘッドライトテスターにもよりますが、発光点が2か所ある場合は、それぞれの間の部分で測定を行うようです。
この車両の場合、ハイビーム測定を行う場合どの部分を遮光するのが正解でしょうか?
ヘッドライトの遮光方法について軽自動車の検査協会の検査官に確認すると「縦にロービーム部分を隠す」との事でした。陸運局近くのカーテスターでは「ヘッドライトの下側全体を隠す」とのことでした。そこでダイハツディーラーに問い合わせた所、通常ロービームでの測定しか行わないので、ハイビームについてはわからないとのことで整備書を確認してもらいましたが、ハイビームについての記述はないようです。しかし、ダイハツディーラーの見解では、「点灯が縦なので、縦に隠すのが正しいのではないか」との事でした。
検査官とディーラーの意見から、縦に遮光する場合、発光ヘッドライトのレンズ面が上下の位置が違っていることから、隠しが足りずテスターがロービームを感知してしまうと、測定位置が変わり不適合になりやすく、隠しすぎると光量が下がり不適合になりやすくなり、加減がなかなかシビアです。
次に、ヘッドライト下側のハイ/ロー部分全体を遮光した状態では光源が一つになりますので、光軸の中心が光部分となり測定位置が上がるため、高さが約15cmほど低い数値となります。
ちなみに、この車両の場合では、下側を遮光して調整を行ったヘッドライトを縦に遮光して測定すると「不適合」となります。
最後に
現行の車両では、ロービーム用に設計されたヘッドライトが普通になってきている中、今回紹介した車両の様に、LEDを使う事で設計の自由度が増し、奇抜な構造のヘッドライトが増えることになると思いますが、このようなヘッドライトは、全自動のヘッドライトテスターを導入している工場では問題にならないかもしれませんが、手動式のテスターをお使いの工場では、紹介の車両のようなケースでは光軸のセンター出しが難しいので、下側を隠した方がやりやすいと思いますが数値が低くなることを理解しておきましょう。
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