ギヤを入れるとエンスト
通常、マニュアルミッション車はクラッチレバーを握るとエンジンからの動力をミッションに伝わらないように切断されます。しかし長く乗らずに放置していると、クラッチレバーを握っても動力が切れず、ギアを入れたとたんエンストしてしまうことがあります。
これは、「クラッチの張り付き」と呼ばれる症状で、クラッチ板が張り付いてしまい離れない状態になっています。そこでクラッチの仕組みと原因を知り、その対策と予防法を説明します。
クラッチ機構の種類
まず最初に、クラッチの仕組みを知っておきましょう。
バイクのクラッチには、「湿式クラッチ」と「乾式クラッチ」があります。
湿式クラッチ
湿式クラッチは、クラッチケースの中でエンジンオイルに浸かっており、文字通り湿った状態でなので「湿式」と呼ばれます。エンジン停止状態では、エンジンオイルはクラッチハウジングの半分も浸かっておらず、使っていない部分は空気が触れた状態になっています。
湿式では、エンジンオイルはクラッチの発熱を吸収、汚れを除去する働きをしています。
乾式クラッチ
ドゥカティやホンダのNSR250SE・SPなどの車種で使われていましたが、現在ではあまり使われなくなっています。
乾式クラッチはと呼ばれるのは、自動車と同じでオイルに浸かっておらず乾燥した状態のクラッチなので乾式と呼ばれます。
湿式に比べて、エンジンオイルによる抵抗がないのでパワーロスがないのが長所ですが、放熱のスリットが切られており音がうるさく、汚れを除去する為に定期的にカスを除去する必要があります。
信号待ちなどで、停車していると「シャラシャラ~」と音がしているバイクがいたら、きっと乾式クラッチ式です。
クラッチ機構のしくみ
バイクのクラッチは、湿式多板式と呼ばれるものが主流で、フリクションプレート(クラッチプレート)と金属でできたプレッシャープレートを交互に配置することでエンジンの動力をミッションに伝達しています。
クラッチレバーを握ると、フリクションプレート(クラッチディスク)とプレッシャープレートの間に隙間が空くことで、エンジンの動力を切断します。
クラッチにレバーを離すと、フリクションプレートとプレッシャープレートがクラッチスプリングの張力により押し付けられることで、エンジンの動力がミッションに伝わります。
握る、離すの動作により、フリクションプレートとプレッシャープレートが接触しだした位置が、半クラッチと呼ばれる状態となります。
クラッチが張り付く原因
停車中のバイクのクラッチは、どのようになっているのでしょうか?
ギヤはニュートラルだったとしても、クラッチレバーを握っていない状態では、フリクションプレートとプレッシャープレートは、クラッチスプリングの張力で押し付けられた状態になっています。
要するに動力を伝えている状態と同じなんですね。
この状態の時、クラッチ機構はエンジンオイルに一部しか浸かっていない状態です。
そうすると、エンジン内に入っている湿気による錆や、エンジンオイルの添加剤成分などが接着剤の役割を果たしてしまいクラッチレバーを握っても、フリクションプレートとプレッシャープレートの間に隙間ができない状態の”クラッチ張り付き”という現象になってしまいます。
張り付いた時の対処法
軽い張り付きなら、飛び出さないように、しっかりとフロントブレーキを握ってギヤを入れるだけで張り付きは外れますが、ガッチリ張り付いている場合は、無理をせずしっかりと暖気してましょう。
十分、暖気をした後でもう一度、フロントブレーキを握りながらギヤを入れてみてください。張り付いている部分が熱で柔らかくなると共に、エンジンオイルが隙間に入り外れやすくなります。
回転を少し上げ気味でギヤを入れても外れないようなら諦めましょう。
クラッチを分解して、張り付いているフリクションプレートとプレッシャープレートを剥がす必要があります。
張り付き対策
フリクションプレートとプレッシャープレートの間に、すき間がある状態にしておけばいいので、しばらく乗らない時は、ゴムバンドやマジックテープでクラッチレバーを握った状態にしておけばいいのです。なければウエスで結んでおいてもいいです。
要するに、クラッチを握った状態にしておくことです。
ちなみに私は、ブレーキレバーロックをクラッチ側に付けています。
張り付き対策でだけでなく、多少の盗難対策にもなりますので一石二鳥ですよ。
最後に
新しいバイクには、「張り付き」が起きにくいと思いますが、クラッチスプリングの張力が強い大型車等のの旧車と呼ばれるものは、なりやすい傾向にあります。
張り付きが起き出すと、1ヶ月ぐらいの放置でも張り付くこともあるので、本来は、分解し部品を交換するのが理想です。
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