個人向けのマイカーリースの宣伝をよく見かけるようになり、新車が安く乗れるような謳い文句にこころ揺さぶられている方も多い事と思います。しかし、内容を良く理解せずに契約してしまうと後から痛い目に合うことになります。そこで正しく個人向けリースを活用できるように、その仕組みの他メリット・デメリットを紹介していきます。
マイカーリースと残価設定ローン
ディーラーなどでは、積極的に残価設定ローンを奨めていますが、マイカーリースとよく似た仕組みですが、何が違うのでしょうか?まず最初に、その違いをみていきましょう。
残価設定ローン
残価設定ローンとは、あらかじめ下取り価格を設定して、車両購入代金から、下取り価格を引いた残価に対してローンを組んで支払う方法ですので、ローンの借入金額が少なくなりますので支払う金利も下がることになります。また残価の設定金額やローン金利は、車種やローン期間、販売店によって異なりますのでご注意ください。ローンの返済期間終了後は、
- ①車を返却して乗り換える
- ②一括もしくは、残価分を再度ローンを組みなおし支払う。
- ③残価分を支払わず車を返却する。
の3つの方法が選べます。
この場合、所有権が設定されるので、車検証の所有者欄には、「ディーラーやローン会社」、使用者欄に「購入者」となります。
また、基本的に点検や車検、自動車税などは、その都度、購入者自身が支払う必要があります。
マイカーリース
マイカーリースは、今はやりのサブスクリプション(subscription)と言えます。サブスクリプションとは、英語で「予約購読」「定期購読」などの意味です。毎月一定額を支払うことで、音楽の聞き放題・動画見放題などがありますが、従来からあるものでも、月額いくらといった販売方式と違うところは、「販売」ではなく「使用する権利」です。
お客様の希望する車をリース会社が購入した車を「残価設定ローン」と同じ仕組みで、将来のの下取り価格分をを引いた金額を月々の使用料を支払うことで借りているのです。そのため車検証上の所有者は「リース会社」、使用者は「リース契約者」となります。
マイカーリースのメリット
以前は、自動車のリースと言えば主に法人向けでしたが、最近では個人でのマイカーリースの需要も増えてきたこともあり、マイカーリースを扱う会社も増えてきています。なぜマイカーリースが人気なのでしょうか?その理由を見ていきましょう。
頭金が不要で新車に乗れる
通常の新車購入では、ローンを組む時に頭金が必要となります。頭金なしのフルローンでの購入も可能ですが、その場合は金利額が増えるので、月々の支払額が増えることになります。また頭金という担保がないことでローンの審査が通らず購入すらできない可能性もあります。
マイカーリースでは、契約期間を設定し、新車の購入価格から、契約期間終了時の下取り価格を予め差し引いた金額を月割りで支払う方式の契約です。先の下取り価格が頭金代わりということです。
月々の支払いが一定
この部分が「サブスクリプション」と言える部分ですが、リース料金の中には、車両代金+購入時の諸費用のみならず、維持費とされる費用も含まれているため月々の支払いが一定な事も人気の理由の一つと言えるでしょう。
車の購入後、車を維持していくには様々な支出が必要となりますが、その中には自動車税のように毎年のものもあれば、車検の整備費用など、毎年から2,3年ごとに必要となる物もあります。
一方のリース契約車であれば、各種税金・保険料・契約によっては車検時の整備費用も含まれているものもあり、月々の支払いが一定である事が人気の一つです。
各種税金
通常の新車購入でもリース車でも、初めは諸費用として自動車税(種別割)や自動車重量税、環境性能割などの各種税金を支払わなければなりませんが、リース車の場合、リース期間中に発生する各種税金は、初めの契約に含んだ料金を算出し、その分も含んだ金額をリース代として、月額で支払っているのです。
保険料
こちらも各種税金と同じように、通常の新車購入でもリース車でも、加入が義務付けられている強制賠償保険(自賠責保険)は、諸費用として支払わなければなりませんが、リース車の場合は、各種税金と同じく保険料も契約時にリース代として組み込まれています。
任意保険は、その名の通り任意加入ですので、通常はリース料には組み込まれませんが、リース会社によっては任意保険も含めてリース契約を行うところもあります。また現在加入されている方は、車両入替をすることで、等級を維持したまま任意保険の継続をすることが出来ます。リース契約とは別の支払いとなりますが、任意保険の支払方法を「分割払い」にしておけばこちらも月々の支払いは一定額の支払いとなります。
車検費用
車検費用の扱いは、リース会社やメンテリース契約の有無によって異なります。リース料は、車両代と税金+保険のみで、車検費用は自己負担の場合もあれば、車検費用も月々のリース代に組み込まれている場合もありますので、契約時に車検費用の有無、車検費用もついている場合では、そのサービス内容、消耗品の範囲などをよく確認しておきましょう。
経費計上ができる
以前は、リースは、法人向けがメインとなっていた最大の理由ですが、法人や個人事業主が新車を現金で一括購入した場合、その年にすべての金額を経費計上することはできません。普通車では、6年かけて減価償却となりますが、リースの場合には毎月のリース料金が経費計上することが出来るので、法人や個人事業主にとっては経費が節減することが出来るのです。
マイカーリースのデメリット
マイカーリースのメリットを見てきましたが、反対にどんなデメリットがあるかを紹介します。
下取り価格
マイカーリースの最大の特徴である残価設定(下取り価格)ですが、これはリースを行っている会社が、それぞれの車に対して設定をしているものですが、ディーラーの下取り査定が低いのと同じように、「最悪の状況」を見越して設定している場合が多く、自身で新車購入した車を下取りや買取業者に販売する方が高くなるケースが多いです。
将来の状態を約束させられた借り物の車
下取り価格を決められたということは、契約期間終了時の車の状態を約束させられたということです。「車をぶつけてしまった。」「コーヒーをこぼしてしまった。」「ペットを乗せて毛や匂いが付いてしまった。」など、約束した状態を維持できなかった場合は、違約金を請求される可能性もあるので、借り物の車として気を使いながら乗る必要が出てきます。
借り物の車なので改造なんて
リース契約の中にも規約がありますが、あくまで借り物の車なので、改造は出来ません。もしどうしてもしたい様であれば、原状復帰できる範囲に留め返却時には、元の状態に戻しましょう。
中途解約
最初に下取り額、税金や保険などすべてを計算したうえで月額を算出しているため、カーリースは、原則として中途解約することはできません。出来ないということは、車を返却したとしても「残り期間のリース代+違約金」は支払わなければなりません。
走行距離
マイカーリースでは契約時に予定走行距離を設定することで、残価が設定される仕組みになっています。予定走行距離が多いと残価設定(下取り額)が下がり、予定走行距離が少ないほど、下取り額が高くなることになります。もし申告していた距離をオーバーした場合は、返却時に違約金が発生してしまいます。
最大のデメリット
先にマイカーリースとは、という部分で「新車の購入価格から、契約期間終了時の下取り価格を予め差し引いた金額を月割りで支払う方式の契約です」と説明しましたが、これはあくまでディーラーやリース会社が行っている謳い文句によるものです。
正しくは、下取り額を引くのではなく「保留」しているだけなのです。一見、下取り額を引いているので分割手数料も抑えられてお得な感じがしますが、実際には、『新車の車両本体価格+諸経費+契約期間内の自動車税数年分とメンテ付きなら契約期間内にある車検代(保険代含む)やメンテナンス代』すべてにに対しての分割手数料が発生しています。
そして恐ろしいことに、包括した金額の分割ですので、自動車税・重量税や自賠責保険代など、その都度自分で払えば手数料が掛からない税金や保険代まで、分割手数料がかかることになります。
リース契約終了後、返却せずに買取をローンで行う際には、残価に対して金利が掛かりますので、再び分割手数料が発生することとなります。最初の契約で残価分の分割手数料を払っているのに、買取の為にローンを組むと、二重で分割手数料を払うこととなります。
残価設定(下取り額)は、保証されていない
残価設定(下取り額)は、契約時点での中古車市場の動向を基に算出されており、その車種で何か重大な欠陥が見つかり、中古車相場が下落したような場合、リース会社から、その下落分の追徴金を請求されます。このように残価設定(下取り額)は、保証された金額では無いのです。残価ではなく暫定価格です。
最後に
マイカーリースについてメリット・デメリットを一通り見てきましたが、金利はもったいないとお考えの方、支払の総額は少ない方がいいといった考えの方は、リースは向かないと思います。最近の自動車は、10年、10万キロは、大したトラブルもなく走りますので、新車購入の方が安く付きます。リース車は、一見、お得なように見えて実は支払総額は大きいので、法人や個人事業主のように税制面でのメリットがある方向けです。
またカードローンの「リボ払い」が定額なので便利だと思われている方にはマイカーリースは、お勧めかもしれません。なぜなら「リボ払い」は、毎月の設定金額を超えた分を借り入れしているのです。その借り入れ分に高い金利が掛かっている事が気にならない方には、手間いらずでいいのかもしれませんね。
マイカーリースを行っている会社によって、サービス内容は異なりますので、しっかり確認の上で契約するようにしましょう。
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